YS-11搭乗記

ありがとう日本の翼


「今度はゆっくりとした旅行に行きたいですね」と書いたのもつかの間、またもやあわただしい旅行をしてまいりました。

発端は北海道旅行のちょっと前、ニコン仲間の1人から架かってきた電話でした。彼女はそこはかとなく鉄子さんでして、だんな様と一緒にローカル線やらSLの写真を撮りに行ったりしているのですが、その彼女が「ねぇ、YS-11乗りに行かない?」と言うのです。
YS-11、戦後日本の唯一の国産旅客機であります。というほどの知識しかないんですが、9月いっぱいで日本の民間旅客路線からは全て引退となる予定のこの飛行機に搭乗&撮影に行こうというお誘いです。何でも6月頃にだんなは一人で行ってきたらしく、彼女としてはどうしても行きたいらしい。や、レシプロ機は大好きですし、YS-11の乗り納めなら是非とも行きたいのですが、いかんせん西日本でしか就航してないし、となると旅費もかさみます。今年の夏は旅行三昧で、カシオペアにいっぱいお金使っちゃったし。。
すると彼女は悲しそうな声で「でもでも、カシオペアは来年も走ってるけど、YS-11はもう9月いっぱいで乗れなくなっちゃうんだよ?」と言うのです。その説得力にあるセリフに負けて、羽田発高知経由福岡往復ツアーに参加することに。9月10日(日)出発、11日(月)午前に帰り、羽田から会社に直行して午後仕事、というステキな旅程です☆


羽田を出て高地龍馬空港へフライト。窓から見える富士山が素晴らしい。でも雲は多くて、高知は雨の予報です。午前中に高知に着いて、半日ほど時間があるので、市内と高知城を観光しよう、という予定なのですが、お天気もつかしら?
10時半に高知へ着いた時は土砂降りの雨でした。うひゃー、なんか、雨の降り方が南国っぽいw 生暖かくて、大粒の雨がどしゃーっと落ちてくる感じ。折り返し11時発のYS-11を撮りたいんだけどな。。空港屋上の送迎デッキへ上がったものの、しばし雨宿り。それでも11時頃には小止みになってきて、カメラを構えることが出来そうです。デッキの金網の間にレンズの先をねじ込むようにしてアングルを見ます。飛行機を撮影するのは初めてですし、離着陸は流し撮りになるので、VRのニィニッパを持ってこようかと思ったんだけど、200mmではとても足りそうに無かったので、結局300mmレンズを持参、それでも滑走路の方へ振るとかなり辛い。
なによりプロペラ機の場合、手ブレ防止に高速でシャッターを切ると、プロペラが止まって写ってしまうのです。最速でも1/125秒くらい、プロペラの回転が円となって写るには1/60秒くらいのシャッタースピードで無いとダメなんだそうで、それを出発前にWebで知り、こりゃ大変だ、と思いました。シャッタースピードと露出を調整しながら何回かカメラを振って流し撮りのポジションをチェック。カメラを振るのは競馬の撮影で慣れてはいますが、シャッタースピードがこうも遅いと自信が無い。とにかく数打ちゃ当たる方式で連写するしかありません。(航空写真撮ってる人が読んだら笑うだろうな。。)


福岡行きYS-11は、定刻より大分遅れて、ゆっくりと滑走路の端へ向かって行きました。直前にANAのプロペラ機が離陸していきましたが、すんげー滑走距離が短いの。プロペラ機だとあんなモンなの?撮影場所をちょっと遠くに取り過ぎたかなぁ。。
別に何の合図があるわけでもなく、YS-11は突然滑走を始め、滑走路の1/3も行かないうちにふわりと機首が上がりました。1枚、2枚、3枚。。。連続シャッターを切りながら必死で機影を追いかけます。ジェット機と違って、機体の上昇がゆっくりです。高知龍馬空港は海に面しており、離陸したYS-11は真っ直ぐに海へ向かって飛び立っていきました。


うわー、難しいねぇ。。と友人と2人画像のチェック。離陸写真で一番良く取れてたのはこれ↓

まぁ、初めてにしては上出来かな?w


さて、バスで高知市内へ向かいます。結構湿気が上がってきて蒸し暑くなりました。はりまや橋で降りて、日曜市を見ながらぶらぶらと高知城へ歩きます。はりまや橋日本三大がっかり名所の一つだそうですが、先日、もう一つの札幌時計台も見てきたワタクシw あと一つは沖縄の守礼門だそうな。あの欄干が赤く塗られたはりまや橋は、なるほど、通りの隅にひっそりとあって、昔は下に水も無かったそうですが、今は公園のように整備されていて、小川が流れています。現在のはりまや橋は石造りの欄干が立派な橋で、片側2車線道路+路面電車が走る、市内の中心です。


はりまや橋


日曜市は野菜、お花、骨董やら刃物、もちろん食べ物も売られていて、様々な露天が軒を連ねています。観光客も多いのですが、地元の人が多く買い物に来ている感じです。道路の真ん中にでっかい棕櫚の木が植わっていて、南国の雰囲気です。歩いていくと彼方に天守閣が見えてきました。高知城です。NHK大河ドラマでおなじみ、山内一豊が建てたお城です。追手門から天守閣を見上げることができ、近く感じるのですが、やはりお城のつくりです。坂道と階段をぐるっと登らなければなりません。かなり蒸し暑くなってきていて、汗を拭き吹き、ようやく天守閣までたどりつきました。
天守閣の中にはいると、古くてひんやりとした佇まい。ハシゴのような急な階段をのぼると、てっぺんに出ます。最上階は8畳くらいの板間。ぐるりと欄干があって、高知市内を一望できます。涼しい風も吹いてきて、極楽気分w


高知城 追手門から天守を見上げる


城下町のカフェで一休み。友人はどうしても路面電車に乗りたいというので、県庁前からはりまや橋まで3駅分だけ乗ってみます。乗る電車も古い型にこだわり、写真を撮る車輌も厳選するという徹底振りで、はりまや橋の停車場で粘ること2、30分。鉄子さんの片鱗がうかがえましたw


高知市電@はりまや橋


半日観光を終えて飛行場へ戻ります。夕方の便に乗って福岡へ飛ぶのです。思えばプロペラ機に乗るのは、旅行先のノルウェーで衝動乗りしたw時以来、2回目です。ちょっとどきどきわくわく☆
搭乗口のゲートから階段を降り、徒歩で飛行機まで向かいます。周りを撮影する時間も取ってくれます。近くで見ると、本当に小さな飛行機ですが、シンプルで美しい機体をしています。左右2列ずつ、64席の機内は、新幹線の車輌みたい。手荷物入れが網棚のごとく、オープンなのです。「お荷物は足元に置いて下さい」と言われました。テーブルもありません。座席の肘掛の先から「コップ置き」が引き出せるだけ。封印された灰皿が往時を忍ばせます。

夕暮れ間近の高知龍馬空港にて


座席の「コップ置き」手前の小さな丸い穴のレバーを引くと、座席の背が倒れます


列車の網棚みたいな「荷物置き」


全員搭乗すると、タラップが機内へ引き上げられ、一つずつプロペラが回り始めます。「ぎゅいーん」という独特の回転音。あぁ、プロペラ機だぁ、ジェットエンジンとは全く違った音です。
離陸も滑走距離こそ短いものの、離陸の瞬間は結構Gが来る感じで、ふわり、というイメージではありませんでした。また上昇角度がゆるいので、ジェットのようにあっという間に高度が上がるわけではありません。思わず「上がれー、頑張れー」と心で応援してしまいますw
巡航高度は1万フィート(3000〜3300m)くらいなので、地上の景色や四国山脈が良く見えます。翼の向こうに赤く暮れて行く雲を見ながらYS-11はジェットの半分ほどのスピードで、ゆっくりと福岡を目差し飛んで行きます。福岡上空に着いた時にはすっかり夜になっていて、海辺の観覧車や港の照明や高速道路のネオンがとても綺麗。福岡空港は街中と言ってもよい所にあります。ビルがびっしりと立ち並ぶ上を舐めるように降りていくのはちょっぴりスリリング。
1時間20分のフライトを終えて福岡に着きました。明日もこの路線を往復して羽田へ戻ります。

YS-11福岡空港