バルタバス率いる「ジンガロ」の騎馬オペラ「Loungta-ルンタ」を観てきました。このバルタバスという人、私は全然知らなかったのですが、馬をはじめとした動物を使った舞台芸術で、母国フランスでは高い評価を受けていて、ヴェルサイユ馬術アカデミーの主宰」も務めているのだそうです。
3月頃から鶴田真由舘ひろしで特別番組かなんかやってて、でもチケットが結構高いのでどうしようかなぁ。。と思ってたんですが、この時期になって、まぁ、観ておこうかとw
「騎馬オペラ」といっても、この作品は別に誰かが歌うわけではなく、台詞を喋るわけでもなく、ストーリーもありません。演劇でもなく、サーカスでもない。チベット僧達の声明をバックに、自然、人、馬、神々のイメージシーンを積み重ねた、シチュエーション舞台&サーカスアクロバットという感じ。
舞台は直径30メートルほどの円形で、サーカスの舞台のよう。中央にチベットのテント・パオを模ったようなドーム型の幕。開演前からすでに低く声明が響いていて、巡礼者が舞台の周りを五体倒地しながら巡拝している。会場内はかなり暗く、ドームの幕の中は、馬の気配こそするものの、真っ暗で判らない。
冒頭の声明がえらく長くて、2chで誰かが「寝る」と書いていたのもあながち間違いではないなとw ただ、その声明がだんだんとチベットの荒野を吹き抜ける風のように低く高く聞こえ、やがてドーム型の幕が上がると。。。中に馬の群れがいた。誰が指図するわけでもなく、馬たちはゆっくりと移動して舞台から去っていく。チベットの風の中を自由に移動していく馬たち、のイメージなのか。
チベット僧の舞踊や、人間を惑わす小鬼たちの軽乗アクロバットや、閻魔大王と鬼たちのピルーエット、人間を象徴しているであろうアヒルの群れと馬上でそれを操る気まぐれな神、人生という旅に疲れた男と寄り添う馬、といった、哲学的でもあるが様々に解釈できるシーンが次々に現れる。都会に生き疲れた顔の人間たちが、スーツや靴を着替えると(脱いだ服を裏返したり、折り返したりするとチベットの民族衣装のようになっている、ネクタイが帯になったり。衣装のアイデアが秀逸!)、草原で自由に生きる馬たちに乗って舞台を疾走する。「心を解き放て」というメッセージのようで、砂を巻き上げながら走る馬の迫力も相まって印象深かった。


さて、この「ジンガロ」、どうみるか、好き嫌いが分かれるのではないかと思います。見事な軽乗を見せてくれたけれども、サーカス、というエンターテイメントではないし、上にも書いたようにテーマ性がなぁ。。舞台芸術・マイムとして見るのが正解か。あの世界観が好きで、スピリチュアルなイメージを膨らませられる人には良い舞台だと思う。馬・馬術としては、正直、馬のレベルは高くないし、バルタバスが見せてくれた騎乗も、確かに高等馬術の演技(ピアッフェ、ピルーエット、手前変換、2蹄跡運動など)なのだが、正確に欠ける。もちろん、ああいう舞台だから、準備運動や演技環境の難しさは重々判っているけれども。4人の鬼が乗ってのピルーエット、まともに後脚を踏んで軸がぶれずに旋回していたのは1頭だけだった。ぬ、4点。。と思わず突っ込んじゃうところがもうダメだw 下手に馬やってる(観てる)人には不満かもしれない。
バルタバスは3頭の馬で演技を見せてくれたが、最後の白い馬が一番レベルが高かったと見えた。
まぁ、「高等馬術」を見たいんなら、ウィーンのスペイン乗馬学校、とまではいかなくても、全日馬場でも近場で十分見られると思う。グランプリ踏める馬って、残念ながら日本にはそんなには居ないけれども。。
あとやっぱりチケット代は高いよねぇ。。プレミア1万2千円、後ろのA席で5000円位の設定だったら、まぁいいかな、と思うけど。もっとも、25頭も馬連れてきて、検疫期間もあるのだし、モノ入りになっちゃうのはしょうがないけれども。。


終わって会場から出る時にちらりと見えたバックヤードで、スタッフの人が乾草にホースで水かけてた。もう9時半回ってるね、お馬さんたちもご苦労様でしたw